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沢井製薬によるスプリセル錠(一般名:ダサチニブ水和物)の後発医薬品の製造販売行為を禁止する仮処分発出について

経緯や顕在化されたパテントリンケージの問題点については、Fubuki先生による2023年11月29日の記事「BMS スプリセル®錠(一般名:ダサチニブ水和物)の後発品を巡る特許権侵害訴訟で東京地裁が沢井製薬のダサチニブ錠の製造販売行為を禁止する仮処分命令を発出 ― 本当の問題点 ―」に詳しく書いてある。

なぜ厚生労働省が沢井製薬による一変申請[1]を承認したのだろうか。

  1. ダサチニブの物質特許
    ダサチニブに関する物質特許は特許第3989175号であり、下表のように延長されている。処分の対象となった物処分の対象となった物について特定された用途延長後の権利満了日スプリセル錠20mg/50mgイマチニブ抵抗性の慢性骨髄性白血病
    再発又は難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病2021年10月6日スプリセル錠20mg/50mg慢性骨髄性白血病
    (ただし、イマチニブ抵抗性の慢性骨髄性白血病を除く。2024年1月27日スプリセル錠にはダサチニブ水和物の形態で有効成分が含まれているが、例えば、請求項1がダサチニブを含む一般式であらわされる化合物、請求項9が化学構造式であらわされるダサチニブの化合物またはその塩となっており、ダサチニブ水和物は文言上含まれていない[2]
  2. 本件で想定される争点
    1. 沢井製薬は延長登録無効審判を請求していないようであるが、本件には知財高裁令和2年(行ケ)10063(2021年3月25日判決言渡)等で判断された事項(請求項にフリー体の「ナルフラフィン」が記載されているが処分の対象となった物に含有される「ナルフラフィン塩酸塩」が記載されていない場合であっても、処分の対象となった物に含まれる有効成分の意味を柔軟に解することで延長登録を認める)と同様の争点で争ったのであろうか。
    2. ただし、上記の争点のみであると考えると沢井製薬が初回の承認で今回効能追加した効能・効果の承認を取得しても良いはずなので、延長された期間についても争点があるかもしれない。この場合、BMSが効能追加したときの国内第I相試験[3]~承認された日[4]までの期間が争点となるが、この期間の始期の根拠となる国内第I相試験はBMSによる効能追加時の用法・用量を『慢性骨髄性白血病における用法・用量の一部「なお、患者の状態により適宜減量する」を「なお、患者の状態により適宜増減するが、1日1回140mgまで増量できる」』とする変更に関する臨床試験と思われるため、他の争点があるのかもしれない。
  3. 疑問点
    厚労省によるパテントリンケージの運用への疑問はFubuki先生の上記記事へ譲るとして、BMSはどのようにして沢井製薬が2023年10月4日に承認を受けた一変申請の内容を事前に知り2023年7月18日に仮処分命令の申立ができたのであろうか?

  1. 正式名称は製造販売承認事項一部変更承認申請である。この沢井製薬による一変申請の内容は、効能又は効果」に「慢性骨髄性白血病」を追加すること

    ↩︎
  2. 明細書中には「化合物又はその塩」と「水和物」を区別するような記載があるため、均等は認められない可能性がある。【0043】本発明の化合物のプロドラッグや溶媒和物も本発明に含まれる。本明細書で用いる語句“プロドラック”は、患者に投与すると、代謝または化学プロセスによって化学変換を受けて、式Iの化合物またはその塩および/または溶媒和物を生成する化合物を意味する。好ましくは、式Iの化合物の溶媒和物は水和物である。↩︎
  3. 国内第Ⅰ相試験(CA180-058試験)は2007年1月~2008年10月に実施された。(審査報告書(2011年06月16日)より)

    ↩︎
  4. 2011年6月16日(スプリセル錠インタビューフォームより) ↩︎

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